「個人映像の志」映画評論家 佐藤忠男氏
『ビデオ SALON』2005年8月号に評論が掲載されました。
個人が映像を作る意味や意義を見直してみよう。その創造の楽しさ、尊さと映像が持つ影響力を見つめよう。 個人映像が持つ役割の大きさと重さを再認識するおよそ 3000 字のコラム。
出光真子は個人映像の注目すべき作家のひとりである。 1969 年にアメリカで8ミリカメラを手に入れて カリフォルニア大学の夜間講座に通って実験映画を作り始め、まもなく 16 ミリで撮るようになった。 1972 年の ” Woman ‘ s House ” は、一軒の家の中のやたらきれいで艶っぽい装飾のある壁や階段をなめるように 撮ったもので、そこには乳房の模型みたいなものがベタベタ貼りつけられていたりして、ちょっと薄気味が悪く、 そこで今、女であるということの条件が、この撮り手にとってなんとも耐え難い桎梏のようなものとして 感じられていることがピンとくる。豊かそうだが閉鎖的な空間の自由のなさ、息苦しさが見事に暗示されていた。