モダーン・ウーマン : 現代の女

ニューヨーク近代美術館(MoMA)出版

長谷川裕子・東京都現代美術館 事業企画課長

同じビデオ作家でも、映像やモニターをナラテイブの形成に使った出光真子は対照的である。深層心理―内なる他者を写し出すもう一つのビデオモニターを画面の中に置き、抑圧された日本の主婦の心理、家や夫や息子へのさまざまなコンプレクスや葛藤をユング心理学的分析に基づき、ホラーホームドラマとして制作した。典型的な人物像にもとづいた形式的な演技は、素人くささ故に、明確な記号性をもっている。主婦という「奪われた存在」が、家庭から奪っていく「正常さ」がパラメーターとして正確に表されている。他の「逃亡者」としての女性作家たちが逃走した現実に半分踏みとどまり、それを相対化したところに出光の特殊性がある。